友人からのひと言「俺、食に興味ないから」。

このひと言の後、ご飯を食べにいったときに、
刺身に醤油をつけたり、ワサビをつけたり、コロッケにソースをつけたり。

食に興味がないというそのアイデンティティの宣言は、その「おいしく食べたい」がゆえの所業により、いとも簡単に崩れ落ちたように感じた。

もちろん、人間はパソコンのようにゼロとイチだけでできているわけではないから、「食に興味がない」=「食べることすべてに興味がない」とはならないことは百も承知だし、三大欲求を抑えられるはずがないので、どのように定義すればこの文脈での「食に興味がない」を示すことができるのかを、退屈なこのスキマ時間に考えてみることにする。

いざ、思考の旅へ。


まず、最近覚えたばかりのSD法を用いて、定性的な印象評価を行なってみることにした。
近くに人が一人いたので、彼に手伝ってもらいSD法にて評価を行なった。
ちなみにこの彼は、この思考の旅のきっかけになった、友人と同じ「食に興味がない」というアイデンティティを持つ若者であるため、調査対象としては非常に適していると思われる。

今回の調査では尺度は5段階として、以下の3つの指標を使用した。

  • 店舗単体の興味が低い ー 店舗単体の興味が高い
  • 食事のカテゴリーへの興味が低い ー 食事のカテゴリーへの興味が高い
  • 食事のおいしさへの興味が低い ー 食事のおいしさへの興味が高い

この指標を使って「食に興味がない」というアイデンティティを相手に伝えるシーンを想定して、評価してもらった。

店舗単体への興味については、店選びの場面を想定で評価をしてもらった。
店選びというシーンで「食に興味がない」と伝えることは、店舗に関するこだわりがないということと一致するという意見があり、評価としては最小の「1」となった。

食事のカテゴリーへの興味については、店を選んでメニューを考えている場面を想定して評価をしてもらった。
結果、食に興味がないといってもメニューは自分で考えることが多く、また自分の好みのものを食べるのが常という意見だったため、評価としては最大の「5」となった。そりゃそうか。

食事のおいしさへの興味については、選んだメニューを食べている場面を想定して評価をしてもらった。
彼は刺身に醤油を付けることもいとわず、またラーメン屋でも調味料のすべてを使うタイプだと言っていた。
結果、評価としては最大の「5」となった。これも当たり前か。

以上から、この分析では彼の「食に興味がない」はお店選びのシーンにおいてよく使われ、「お店選びに興味がない」という意味を指していると定義されると結論づけた。
背景を考察するのであれば、これはお店選びを、相手型に委ねている段階でよく使われ、相手のお店選びにプレッシャーを与えないためのやさしさから成り立っている建前であると思われる。

本題だった友人に関しても、彼と同じように「お店選びに興味がない」という意味で使用している可能性が高いと思っている。

この他に考えられる可能性としては、ちょっとの労力で美味しくいただけるのであれば、美味しく食べるという習性があるのかもしれない。
その場合は「(自分から見える他の人と比較して、比較的)食への関心が薄い」といえそうだ。

友人の過去の行動から察すると、店選びはどこでもよく、メニュー選びは行い、無料や比較的安価な調味料があれば使って美味しく食べるという、寛容な人物像が文面からも浮かび上がる、よい友人である。